WEB町長室

仕事と作業

2025年2月28日

 JR東日本新幹線の車内清掃を業務とする、「TESSEI」という企業があります。
 業務内容は、東京駅に着いた新幹線から乗客が降りた後、発車までの7分間という限られた時間内で、その車内を清掃するという単純な業務です。
 誰もができる単純な業務ですから、どんな人がその会社に就職したかと言いますと、希望する仕事にも就くことができず、仕方なく就職したような人たちだったと言います。

 新幹線が東京駅に着き、お客さんが降りるとすぐに清掃に入るわけでありますが、その姿を見たお客さんが子どもに「ちゃんと勉強しないとああいう風になるんだよ。」という声も聞こえてきたそうです。
 そのようなことですから、恥ずかしくて仕事のことも親戚に言えず、娘さんも親が清掃員だということを恥ずかしくて言えなかったそうです。

 当然、働いている人たちにも仕事に対する誇りなどなかったわけでありますが、何年か経つと、総勢22人がたった7分間で新幹線の車内を完璧に清掃するものだから、お客さんたちに認められるようになってきました。
 アメリカのハーバードビジネススクールでは、たかが清掃と言われていたものが「新幹線劇場」と評され、奇跡の7分間と紹介されたそうです。

 そうすると、あんなに恥ずかしくて人にも言えなかった社員が、仕事に誇りを持つようになってきました。
 最初は愚痴をこぼしながら単なる作業をしていたと思われますが、仕事の内容は当初から変わっておりません。

 変わったのは、働いている人たちの意識だけです。
 社会に認められるようになると、私が掃除をしたこの新幹線にお客さんたちが喜んで乗ってくれると想像しながら清掃するようになってきたと思われます。
 そうすると、清掃業務は単なる作業でなく仕事になります。

 最初、「TESSEI」に入ったときにはプライドを捨てましたが、今はプライドを持つことができましたという声も聞こえるようになりました。

 私が新幹線に乗車するためにホームで待っていると、掃除を終えた後に清掃員全員がドアの前でお客さんに一礼をする姿を見ますが、全員自信に満ち溢れております。

ページの先頭へ戻る