脳外科医に学ぶ
2007年5月14日
人命を救うということは崇高なことであります。私は、人の命を救うために全力で取り組んでいる医者のドキュメンタリーがテレビ放映されると必ず見ております。
そのなかで、脳外科の権威である旭川赤十字病院上山博康医師は、相当数の難しい手術を成功させておりますが、ある雑誌のインタビューで医療に対する思いを次のように語っておりました。
上山医師は、新人の頃より北大で難しい手術を手がけて有頂天になっていたそうでありますが、ある医師の手術に立ち会った際、その技術の高さに腰が抜けた思いだったそうです。
喩えると、国体で優勝していい気になっていた男が、カール・ルイスを間近に見たようであったということでした。
そこで上山医師は、その医師のもとで修行するわけであります。
ある時、重症で手の施しようのない患者さんの手術に立ち会いましたが、その医師でも成功させることができなかったそうです。
手術後、その医師は深々と頭を下げて「力及ばず申し訳ございませんでした」と家族に謝ったそうです。
上山医師にすると、「そうやって謝ったら、こっちに落ち度がないのに医療ミスのように取られてしまいませんか」と問いただすと、その医師は次のように言われたそうです。
「それは上山、医者の論理だろう。医者にはダメと分かっていても、患者さんの側には分かるわけがない。助けてほしいから来ているんだよ。俺たちに力がないから助けられないんだよ」
「また、患者は人生を懸けて手術台に上るんだ。俺たちは何を懸ける。お前のプライドを懸けろ。医者としての全てのプライドを懸けろ。それしか患者の信頼に応える方法はないんだ」
それを聞いて上山医師は、医療の神髄に迫る教訓を得たと述懐しておりますが、このことは私たち行政にも当てはまります。
町民は、困ったことがあると役場に相談に来ます。
行政側とすれば、町民から相談を受けることは日常茶飯事のことでありますが、町民にすると、役場に相談に来るということ自体相当な覚悟が必要だと思います。
その時に、町民の思いを汲んで真剣に相談に乗ってやることができるかどうかが、行政のプロとしての真価を問われる時であります。
もちろん、町民と同じ目線となって相談に乗らなければならないことは申すまでもありません。